こんにちは!Ques事務局、新メンバーの鏡谷です。
去る5月28日に、第26回Quesを開催いたしました。
ご来場いただきました皆様、オンライン視聴いただいた皆様に改めて御礼申し上げます。
第26回Quesでは「AIで加速するQAの現場」をテーマに、
株式会社ディー・エヌ・エー 花房 輝鑑氏
株式会社GA technologies 柿崎 憲氏
にご講演いただき、沢山の反響をいただきました。
また、質疑応答やアンケート等で大変多くのご質問をいただき、皆様の熱量の高さを感じられたのですが、当日は時間の都合で一部しか取り上げることができませんでした。
そこで花房氏、柿崎氏に改めてお時間をいただき、注目度の高かったテーマを中心に、再び語っていただきました。
今回はQues史上初(たぶん)の試みである後日インタビュー企画、題して「Re:Ques(リキューズ)」をお送りします!

ー 改めて、第26回Quesにご登壇いただきありがとうございました。ご講演を終えての率直な感想や、社内外からの反響はいかがでしたか?
花房氏:社内では日常的にやっていることなのですが、外部の方がこういう泥臭い話に興味を持ってくださるんだなと改めて認識しました。「本当にこういう話でいいんですか?」と事前に何度も確認したくらいで(笑)。
後日、他社の方とお話しする機会があり、「AIを使っていこうと声をかけるだけでは全然浸透しなくて悩んでいた。参考になった」と言っていただけて、やってよかったなと感じています。
柿崎氏:私は久しぶりの登壇で、とにかく喋れて超楽しかったです(笑)。社内でも翌日Slackで資料が共有されて「さすがっす」と褒められました。今回は具体的なツールのTipsよりも、組織論に近いところを話したので、最近の生成AIの切り口としては少し珍しく、そこが皆さんに刺さったのかなと思っています。
ー 花房さんのご講演では、「心理的ハードルを壊すためのアプローチ」としてハンズオンの取り組みが紹介され、参加者からの反響も非常に大きかったです。この取り組みを選択したきっかけは何だったのでしょうか?
花房氏:去年の2月頃、DeNAでは「AIオールイン」という方針を打ち出し、社内の温度感がグッと高まりました。しかし、しばらく様子を見ていても、自発的に使うのはごく一部のメンバーだけでした。
品質管理部には協力会社所属のメンバーも多く、テスト計画や設計などの業務を担っていただいていますが、「本当に自分たちも使っていいのだろうか?」「間違って機密データを入れてしまったらどうしよう?」という遠慮や心理的ハードルが高かったのだと思います。
現場で成果を出すには全員に使ってもらう必要があったので、同じ目線で一緒にAIを触る場を設けて、まずは「触る」という第一段階をクリアしましょう、ということで始めました。ハンズオンで使い方や使用してよい範囲を伝えながら一緒に触ることで、普段関わりのないメンバー同士のコミュニケーションも生まれ、お互いに参考になった部分が大きかったと思います。

ー AIを現場に浸透させた結果、効率化は進んだのか、という質問もありました。実際のところ、効果はどの程度出ているのでしょうか?
花房氏:前期は「AIを使うのが当たり前」という状態にすることを目指していたので、生産性やクオリティへの具体的な影響は、今期に入ってから測定を始めたところです。
速報値では結構バラつきがありますね。「1週間でAIによってどれくらい時間が減ったか」を大まかに聞いたところ、10%も減っていないという人もいれば、30%以上効率化できたという人もいます。業務内容やプロジェクトの制約が大きく関わっていると感じています。
柿崎氏:数字を聞くと肌感覚としては「それくらいなのかな」と思いつつ、細かく見るとすごくブレますよね。例えばGA technologiesのQAでも、テスト設計やレビューに絞ってヒアリングすると「以前は1時間かかっていた作業が10分で終わるようになった」「70%以上改善した」という声もあります。現場の実態に合わせて細かく見ていくと、実はもっとすごい成果が出ているような気がします。
ー 劇的に減っている事例がある一方で、全体を見るとまだ数字が見えづらい時期なのかもしれませんね。
柿崎氏:あとは、その実際の成果がどれくらいビジネス的な成果やインパクトにヒットしているか、という点がめちゃくちゃ難しいですよね。
ー そこで繋がってくるのが、柿崎さんのご講演にあった「品質の再現」というキーワードですね。改めてこの意味について教えていただけますか。
柿崎氏:システムの「冪等性(べきとうせい)」だけでなく、良い結果を繰り返し出せる能力や、組織が正しく学習できることまでを含めて言っています。ビジネス的に「AIで何が良くなったんだっけ?」というのをはっきり言える形になっていないと、生成AIの成果はどこかで止まってしまいます。
DeNAの南場さんが「半年やってみて、みんなやりたかったことができるようになって、隙間を埋め始めた」というお話をされていて、それが僕の中ですごく刺さりました。
(※2026.3.6『DeNA × AI Day 2026 | Proof.』クロージングにて)
花房氏:うちの品質管理部のメンバーに「楽になった時間で何をしてるの?」と聞くと、「これまで時間が取れなくてできなかったことをやっています」と返ってきます。ただ、それが直接的な改善や成果に繋がるかというと、意外と繋がらないものも多くて。
ー 自己満足で終わってしまったり、「やらなくて良いこと」までやってしまう懸念ですね。
花房氏:ただ、1つポジティブなのは、自発的に「何かやろう」というアイデアが出てくるようになったことです。その改善が良い方向に向かってくれれば、大きな成果になるはずです。
柿崎氏:僕もそう思います。「隙間を埋めに行く」のが必ずしも無駄なことばかりではないと。現場目線でできなかったことが単純にできるようになって、次の改善につながる可能性があるなら、そこは研究開発の種まきとして信じたいですよね。全てを合理的に考えるだけでなく、そうした余白も大事だと思います。

ー QAが「品質成立の接続点」となり、他部門との連携がこれまで以上に重要になる中で、他部門の仕事や制約を理解するには何が効果的でしょうか?
柿崎氏:一番効果があるのは「業務体験」ですね。QAに限らず、エンジニアでもPdMでも、他部門の業務を体験したことのある人は理解力が全然違います。エンジニアがスケジュールに追われながらコーディングしている苦労を知れば、見え方も変わります。
ただ、組織的に受け入れるハードルが高いのも事実です。僕らの場合は、各部門で作っていたオンボーディング資料を構造化してまとめる、といった取り組みから始めています。
また、先日マネジメント層に「アジャイルの4象限」を教える機会がありました。テストがビジネス目線なのか開発目線なのかを紐解いて説明するだけでも、皆さんの解像度がグッと上がり、共通認識ができました。AIを使って誰もがQAっぽいことができるようになるからこそ、ベーシックなテスト観点を整理して伝えることが重要です。
ー 当日の質疑応答ではレビューを人間がやるか、AIがやるかというお話もありました。いずれAIが全て肩代わりする日が来るのでしょうか?
花房氏:今のところは無くならないと思いつつ、対象がテストケースのレビューから、その前段階の設計やPRD(製品要求仕様書)などの上流レビューへと移り変わっていくんだろうなと感じています。
柿崎氏:全てをAIが肩代わりするのは、しばらくは無理なんじゃないかなと思います。AIの出力は90%まではめちゃくちゃ早いですが、そこから本番運用に乗せるまでの残り10%を埋めるのが大変です。99%まで行けても、最後の1%は「人間のジャッジ」や「覚悟」の問題になってきます。
生成AIそのものが確率論的な構造を持っている限り、同じ入力で同じ結果が得られるとは限りません。それに確信を持ってリリースできるかというと難しい。何かあった時に、ブラックボックスのコードを1から読み解きに行くのは現実的ではありません。
花房氏:現場でも、AIが出力したものに対して「自分が作ったものではないから責任を持ちたくない」と職人肌のメンバーもいれば、逆にAIを盲信してコピペしてしまうメンバーもいて、ここのコントロールは非常に難しい課題ですね。

ー AI活用で避けて通れないハルシネーション(もっともらしい嘘)について、どう対策されていますか?
柿崎氏:これはもう、一生懸命ガードレールを作る(ハーネスエンジニアリング)しかありません。根本的なハルシネーションの解決策は、僕自身はあまり改善されていかないのではないかと思っています。「そういうものだ」という前提で使い続けることになるでしょうね。
花房氏:現場レベルでは、プロンプトの工夫や最終的な人のレビューでカバーするといった当たり前の範疇になります。
ー 最近、現場で注目しているAIツールはありますか?
柿崎氏:NotebookLM(現 Gemini Notebook)とClaudeですね。ただ特定のツールに固執せず、満遍なく使っているのが現状です。
花房氏:品質管理部でもClaudeがホットになってきています。プロジェクトの仕様書などを放り込んでテストケースを作らせると、以前のモデルに比べて速度も質も、人が作ったものに近い出力が出てきて驚きました。人の目を入れて調整すれば、人力だけでやるより遥かに楽にできます。
ー AIで開発が加速していく時代において、QAエンジニアは今後どのようなスキルを身につけ、キャリアを描いていくべきでしょうか?
花房氏:品質をどう作り込んでいくか、品質を設計していくかという「より上流の仕組み作り」の部分にシフトしていく必要があると考えています。テストの設計や実行はAIで効率化が進むので、品質の方針や基準を作り、ディレクションするバリューが求められます。
懸念としては、最初から生成AIがある環境で育つと、泥臭く手を動かしてバグを探す「経験や体験」が減ってしまうことですね。異常系の観点は痛い目を見て蓄積されるものですが、AIは正常系は得意でも異常系は物足りないことが多いので、人間が異常系を見つける嗅覚をどう養っていくかが課題です。
柿崎氏:僕は、ソフトウェアエンジニアリングの「基礎に戻る」ことが重要だと思っています。いかにAIに目的を伝えるかという言語力が求められる一方で、フレームワークやコンテナ技術、開発プロセスといった基本的な知識をちゃんと押さえた上で、AIと一緒にどう設計していくか。
既にうまく生成AIを使う人と、そうじゃない人に分かれてきているように、うまく生成AIを使った開発のプラクティスが出てきて、それが知識のベースになっていくのではないでしょうか。
ー 顧客が本当に必要だったものを正しく聞き出し、仕様に落とし込んでいく。そうした「要件を紐解く力」がこれからのQAには不可欠になりそうですね。
花房氏:我々がそれを組織に浸透させていく役割を担わなければいけないのかもしれないです。

ー 最後に、今後のQuesへの期待と、現場のQAエンジニアへ向けたメッセージをお願いします。
花房氏:今後のQuesでは「現場のドロドロした話」や、本当にAIだけでQAをやってみたらどうなったか、という事例を聞いてみたいですね。
現場の皆さんにお伝えしたいのは、大きな環境の変化に対して否定的なスタンスを取らず、まずは新しいテクノロジーに触れてみてほしいということです。柔軟に対応し、これまでの経験と融合させることで、QAとしての新しいバリューを高めていけるはずです。
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柿崎氏:僕はQAのマインドセットや、生成AIしか知らない若い世代がどうプロダクトを作っているのかを聞いてみたいです。
QAは何十年も「なくなる」と言われながら、無くならずに変化し続けてきた職種です。生成AIが出てきて、最後のテストやレビューを誰がやるのかと問われている今、また新しい役割が求められています。せっかくなので楽しみながら向き合ってほしいですし、常に好奇心を持ち続けて、次世代のQAのスターが出てきてくれることを期待しています。
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ー 本日はありがとうございました。

